温かい力

 

 

 

 玉座から城の廊下へと出ると、パルトガインの兵士たちは皆悶え苦しんでいた。

 

「な……なんだこれは!?」

 

 先頭を行っていたギンタが思わず立ち止まる。

 今までは皆、普通の様子だったのに。前触れもなく起こった事態に、メルのメンバーは目を見開く。

 

「あああああ熱い! 体が……」

「うあああああ!!!!!」

 

 よく見ると、兵士たちは鈍い光を放つゴーストARMを身につけていた。

 

「待って! 今ホーリーARMで……」

 

 スノウが胸元から癒しの天使を取り出し、苦しむ兵士へとかがみ込んだ瞬間、

 

「!!!!!」

 

 まるで砂のように、兵士たちの姿は掻き消えていった。

 荘厳な刺繍が施された絨毯には、死体も残らなかった。

 

 

「これが……ゴーストARMの真実よ」

 

 

 その様子を苦渋に満ちた表情で見つめながら、ドロシーが言う。

 

 

「ゴーストARMに手を出した者は、強大な力を手に入れる代わりに破滅する……カルデアの歴史から抹消された理由はこのせいよ」

 

 

 それは、まるで悪魔との契約。

 城塞国家パルトガインは、自国の繁栄を手にする代わりに、知らず命を売っていたのだ。

 

 

「ホンマに……恐ろしいもんやな。ゴーストARMちゅうもんは……」

「……ああ」

 

 ナナシの口から自然と出た言葉に、アルヴィスはわずかに目を歪めながら同意した。

 

 

 

 

 パルトガインの終わりを見届ける一行。

 救いを求める兵士たち。虚空に伸ばされた手。

 この世に最初から、存在すらなかったかのような無惨な最期。

 

 

 …………ゴーストARM。

 己の体にもあるそれ。

 間に合わなかった時は、自分もこんなふうに消えてしまうのだろうか。

 心も体も、思い出すらも消されるようなこんな形で。

 

 

 ………………何も残らずに?

 

 

「……大丈夫や。」

 

 

 アルヴィスの心境を察したナナシが、そっと声をかける。

 はっと焦点を元に戻すと、ナナシは安心させるようにアルヴィスの背中を叩いた。

 自分よりも少し背の低い、小さな背中を。

 

 

「アルちゃんは死なさへん。自分らが絶対にな。」

 

 

 凍り付いた心を溶かす様な、温かい言葉。

 アルヴィスに向かい、他のメンバーもしっかりと頷いてナナシの言葉に同意を示した。

 

 

 不安は消えないけれど。

 未来がどうなるかなんて、まだわからないけれど。

 それでも。

 

 

「……ああ」

 

 

 仲間たちの力強い笑みに、きっと大丈夫だ、と確かな希望を感じ、アルヴィスは小さく笑みを浮かべた。

 

 

「____行こう」

 

 再びギンタを頭にして、出口を目指し始める

 前へ進むため、アルヴィスは前足を、思い切り踏みしめた。

 

 

 

END

 

 

 

 

 

ゲーム版で冒頭のシーンがあり、そこにアルヴィスの心境と、メルの絆を少し付け足したような話です。

クラヴィーアはホント名作です。エンディングに何度涙したかわかりません。

私はこれをやる為にDS買ったみたいなもんです。見事にしてやられました、コナミに。

強いて言わせてもらうなら、ここまで良いシナリオなんだから、二週目は隠しエンディングだけじゃなく、基本ストーリーをもっとアルヴィスの心境について掘り下げて欲しかった……。個人的にですが。

 

 

強がってるんじゃなくて、口に出すともっと心が弱くなってしまいそうだから、アルヴィスは色んな感情を我慢してるのだと思います。

だからこそ、さりげないメンバーのフォローがすごく支えになる、そんな感じで書きました。

短いものですが、最後まで読んで下さりありがとうございました!