涙に染まる雨

 

 

 

「ギンタ……逃げろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 正気を取り戻したアルヴィスの血を吐くような叫びと共に、いくつもの13トーテムポールが向かってくる。

 それを何とか受け止めながらギンタが再び彼に呼びかけようとすると、幾分力のこもった手でドロシーに肩をつかまれた。

 

「ギンタン! ここから脱出するよ!」

「ダメだ! アルヴィスはまだ自分を見失ってねぇ!」

 

 アルヴィスを置いていくというドロシーの言葉が理解できなくて、激情のままギンタは彼女に叫び返す。

 

「一旦体勢を立て直さないと! 今ほかの奴らに襲われれば太刀打ちできないわ!!」

 

 意見をぶつけ合う二人の前に躍り出て、ナナシとアランが飛んで来た13トーテムポールを素手で受け止めた。

 

「ここは自分らが引き受けるわ!」

「お前らは早く行け!!」

「ギンタン!!」

 

 彼女たちの冷静な指摘は頭ではわかる。でも彼は自分を呼んだのだ。

 ゾンビタトゥの魔力に支配されている中、確かに自分の名を呼んだのだ。

 それを置いていける訳がない。置いていっちゃダメだ!!

 ギンタはドロシーの手を振り払うと、もう一度振り返って彼の名を呼んだ。

 

「アルヴィス!!」

 

 魔力に支配された赤い瞳が、静かに自分を見つめた。

 

 

 

「やれやれ……ここまで自我が強いとは、さすがファントム様の入れこんだ方だ」

 

 城の外壁に立ち、窓からの光景を見下ろしていたカペルは眉根を寄せて呟いた。

 しかしやがて表情を崩すと、残酷な笑みを浮かべ、

 

「ではこれなら……どうですか?」

 

 自らの魔力に呼応する、「時間の輪廻」の魔力を一気に高めた。

 

 

 

 

「——ッ!!」

 

 突然今まで攻撃を続けていたアルヴィスが呻きを漏らし、彼の身体がガクンと傾いだ。

 同時にギンタたちに飛んできていた13トーテムポールがガランガランと音を立て、次々に床に落ちてゆく。

 

「……アルヴィス?」

 

 アンダータを取り出し移動しようとしていたドロシーが動作を止め、理由を問うように呟いた。

 アルヴィスは自分の身体を抱きしめるように腕を回し、地面に膝を着いた。

 溺れているときのように荒い息遣いで肩を上下させる姿に、ギンタは彼の名を叫びながら駆け寄ろうとする。

 

「——来るなぁ!!」

 

 しかし当のアルヴィスに強い声で制されて、混乱しながらもギンタは慌てて立ち止まる。

 激しく息をつきながらうずくまるアルヴィスにどうすればいいかわからず、ギンタはとにかく彼に叫んだ。

 

「どうしたんだアルヴィス! しっかりしろ!!」

「う……あ……あ…………!!」

 

 焦燥感にかられながらもただ見守ることしかできない一同は、アルヴィスの身体から彼のものとは異質な魔力が立ち上っているのに目を見張る。

 ゾンビタトゥに支配された彼の瞳と同じ色の、禍々しい魔力。

 

「ゴーストARMの魔力が……高まっとる……!?」

「こんな急にッスか!?」

「——っ!!」

 

 ナナシに次いでジャックが当惑しながら言ったとき、第三者の気配を感じアランは横にある大きな窓の方へ勢いよく振り向いた。

 小さく視界に映る人物が、大きく魔力を増幅させながら残忍な笑みを浮かべ、自分たちを見下ろしている。

 気がついたアランは舌打ちし咄嗟に魔力を練り上げた。

 

「エアハンマー!!」

 

 瞬時に放出された空気の固まりは窓を破り、真直ぐにその人物へ向かっていく。

 だが人影はすぐに姿を消し、アランの攻撃は破壊音と城に大きな穴だけを残した。

 

「ちっ!!」

「アル!! アルヴィス!!」

 

 必死に呼びかけるベルの声に反応したのか、アルヴィスがわずかに顔を上げた。

 同時に彼のまとう魔力が涼やかなものに戻る。

 苦しそうに顔を歪める彼の瞳は、いつもの青い色だった。

 しかしまた瞳が赤色へと塗りつぶされて、違うものに変化した魔力にさらに苦悶の声をアルヴィスが上げる。

 傍で一同が現状を把握しようと見ているあいだにも、アルヴィスの持つ魔力の色は何度も二つの違う色へ移り変わる。

 そのたびに繰り返されるアルヴィスの苦しげな声に、ベルは涙を千切れさせながら叫び、彼女が今にも彼の許へ飛ぼうとするのをスノウが手で制していた。

 

「アル!! アル!!」

「どうなってるの!?」

 

 スノウが隣に立つドロシーを振り仰ぐと、ドロシーは箒を構えていない手を握りしめながら答えた。

 

「ゾンビタトゥに、アルヴィスの意識が抵抗しているんだわ」

 

 増幅した時間の輪廻の魔力に呼応し、急速に進むゾンビタトゥを、アルヴィスが自らの魔力で抑え込もうとしてるのだ。

 二つの魔力がぶつかり合い、周囲に激しい渦を作り出していく。

 

「うわっ……!!」

「なんちゅー魔力や……」

 

 魔力の波動で生まれる風に驚くジャック。あまりの勢いにナナシも腕で身体を庇う。

 焦りを隠せない様子でバッボがギンタに告げる。

 

「このままではアルヴィスの身体が保たんぞ! ギンタ!」

「オッサン! 何とかできねぇのか!? アルヴィスを助けられないのか!」

「……てめぇのアリスが効かなかったんだ! 俺たちに出来ることはなんもねぇ!」

「! くそぉ!!」

 

 ギンタが憤りを拳に込めた時、不意に空間に声が響いた。

 

「——アル! 頑張れ!!」

 

 顔を上げると、ベルが泣きそうになりながらもアルヴィスに呼びかけている。

 思わず皆がベルを見つめる間も、彼女は小さな身体で風の中、懸命に声を上げ続けていた。

 

「ゾンビタトゥに負けないで! 今まで頑張ってきたじゃない! ベルはいつも傍で見てたよ!!」

「——そうだ! アルヴィス!! 頑張れ!!」

「もうちょい持ちこたえろ!!」

「アルヴィス!!」

 

 彼女に触発され、一同がアルヴィスを励まし続けると、徐々にアルヴィスの身体を渦巻く魔力の勢いが弱まってきた。

 妖しく輝いていた瞳も段々と焦点が戻ってくる。

 その様子にギンタたちがほっと喜色の色を浮かべた。

 

 

 直後。

 

 突如、背後で魔力が膨れ上がった。

 

 

 

 全身を一瞬で冷たい感触が駆け巡る。

 

 

 これが、血の気が引くことだとギンタが理解した時、

 

「!!」

「! ああああああああ!!!!」

 

 落ち着きかけていたアルヴィスから、魔力が一気に放出され、彼の叫びが響き渡った。

 

「アルヴィスーーーー!!!」

 

 

 

 

 

「ああ……ああ…………」

 

 痛みと魔力に意識を支配されるアルヴィスの脳裏によぎるのは、光が溢れる眩しい世界。

 どこまでも広がる蒼穹の空と大地。雲間に差す太陽の光。穏やかな顔をもつ海。

 髪を吹き抜けていく、柔らかな風。

 

 大好きな、守りたい世界。

 

 

「う……あ…………」

 

 

 “メルへヴンが好きか?”

 

 

 六年前、太陽のような笑みを浮かべ訊ねた人。

 何の躊躇もなく頷いた幼い自分、この世界を守ると決意した瞬間。

 

 

 同じ紋章を背負った人々。

 守ると約束した小さな妖精。

 不思議な縁の許に、戦場を駆け抜けた仲間。

 そして自分が喚んだ、あの人の血を持つ少年。

 

 

「ギンタ……」

 

 

 その全てが、頭の中から消えていく。

 

 

 

「や……めろ…………」

 

 

 

 

 塗りつぶされていく。塗りつぶされていく。

 オレがオレでなくなっていく。

 

 

「オレ……オレは…………」

 

 

 

 

 

 

 生きたいのに

 

 

 

 

 

 

 頬に、一筋の涙が伝った。

 

 

 

「うう……あ……あ…………!」

 

 

 

 

 

 パンッと、彼の中で何かが弾けたのを、そこにいた全員が感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 魂が塗り変えられていく瞬間を、瞳を見開いて全員が聞いていた。

 

「飲み込まれた……アルヴィスの魔力が……」

 

 声にならない声で、絶望的な言葉を口にするドロシー。

 

 身動きすることも出来ず立ち尽くす一同。

 やがてアルヴィスの声が途切れ、放出されていた魔力が収束する。

 床に投げ出されていた両手が持ち上がり、何事もなかったかのように彼が立ち上がった。

 

「……アルヴィス……?」

 

 胸に残る『もしかしたら』という希望を捨てられず、恐る恐るベルが声をかける。

 

 するとアルヴィスはゆっくりと首を傾けて、血のように赤く輝く瞳でこちらを見た。

 

 

 そして、自分たちの姿を認め、獲物を見つけたように

 

 

 

 ニヤリ、と、妖しげに、嗤った。

 

 

 

 息を飲み、背筋を凍り付かせるベル。

 唇を噛み締めて、血が滴るほど拳を握りしめたアランが告げる。

 彼を救う、方法を。

 

 

「もう……アイツを止める術は……」

 

 

 

 両手で口を覆うスノウ。

 反応することも出来ず、沈黙したままのドロシー。

 

 

 

 

「たった一つしかねぇ」

 

 

 

 泣きそうな表情をすることしか出来ないジャック。

 苦しげに瞳を歪めるナナシ。

 

 

 それぞれの想いを覗かせている仲間たちの表情を受け止めながら、ギンタは、前へと進み出る。

 

 

 

「……バッボ」

「……うむ」

 

 

 静かに名前を呼ばれたバッボはギンタの意図を理解し、それ以上何も言わずにダガーに変身する。

 

 銀色に光る刃を構えたギンタは、前方に立つアルヴィスに向かって、走り出した。

 

 一歩、二歩。

 

 

 

 ——ギンタ、頼みがある。

 

 

 

 石造りの床を蹴る度、アルヴィスに近づいていく。

 

 

 

 ——もしオレが、暴走したら...

 

 

 

 ギンタを視界に入れたアルヴィスが、体勢を整え攻撃の動作に入ろうとする。

 

 

 ——その時は、お前が......

 

 

 

 彼が、足を踏み込んだ、瞬間

 

 

 

 

   オレを、殺してくれ

 

 

 

 

 ギンタは、右手を前に突き出した。

 

 

 

 

 刹那、アルヴィスが目を見開いた。

 

 

 そして、切なく瞳を揺らしながらも、満足気に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 やがて、砂が零れるように、ゆっくりと、倒れていった。

 

 

 

 

 

「——アルヴィス!!!」

 

 

 どさっと、彼が崩れ落ちた音が響いた瞬間、現実が元の早さで流れ出す。

 駆け寄り抱き起こすと、ギンタの手を溢れ出す鮮血が染めてゆく。

 実戦を多く積んだギンタのダガーは、まっすぐにアルヴィスの胸を貫いていた。

 傷のすぐ隣に癒着していた時間の輪廻がパキンと甲高い音を立てて外れる。

 

「アルヴィス!! アルヴィス!!」

 

 何度か名を呼ぶと瞼が震え、透明な輝きを持った青い瞳が現れた。

 

「……ギンタ……」

「! アルヴィス……!」

「ギンタ! 今、アルヴィスの傷を……!」

 

 ギンタの隣にかけ寄ったスノウが服の奥から癒しの天使を取り出し、すかさず魔力を練り込み始める。

 生まれる柔らかな光。

 アルヴィスの胸に添えられたスノウの掌から、すぐさま傷を包みこんでいく。

 しかし、治療を施している間にも屈みこんだギンタたちの足下にどんどん血が広がっていく。

 

「っ! ダメ……この傷じゃ……!!」

 

 必死で魔力を練り上げるスノウに、ふいに冷たく優しい手が触れた。

 はっとして見ると、穏やかな顔をしたアルヴィスが、かざしている自分の手に指を伸ばしていた。

 

「いい……スノウ」

「……でもっ!」

 

 その言葉の意味するところを察して、スノウが声を上げる。

 しかし、アルヴィスはただ静かに頷いた。

 この先にある己の運命を受け入れて。

 

「——っ……!」

 

 スノウの瞳からこらえきれない涙が一粒零れる。

 それに苦笑するように僅かに目元を細めたアルヴィスは、力を失いつつある腕をゆっくりと動かし、ギンタの方へと持ち上げた。

 気付いたギンタがしっかりとその手を握ると、アルヴィスは痛みに襲われながらも弱弱しく笑顔を浮かべた。

 

「ありがとう……ギンタ……」

「アルヴィス……」

 

 くしゃくしゃに歪んだ顔になっているのを自覚しながらも、ギンタは感情が零れないよう唇を真一文字に引き結んでいた。

 

「“オレ”を取り戻してくれて……」

 

 満足そうに笑うその姿と言葉に、ギンタは更に顔を歪める。

 

 

 ゴーストチェスに連れていかれる前、アルヴィスが口にしようとした願い。

 呪いに抗うことを放棄するようにも聞こえるそれを、ギンタは一度否定した。

 らしくないと、言葉を畳みかけて。

 

 でも、一番生きたかったのは誰だ?

 

 

 “わかるんだ……自分が自分でなくなっていくのが…………”

 

 

 どんな時も弱音を吐かなかった彼が、初めて零した言葉。 

 失いつつある自我と変化し続ける身体への恐怖。

 生きることが叶わぬなら、せめて人として終わりたいという当たり前の想い。

 

 

 そんな気持ちすら、捻じ曲げてしまう圧倒的な力の前に

 

 

 必死に紡ごうとしたそれは、

 

 

 

 

 彼の切実な、願いだったのだ。

 

 

 

 なあ、どれだけ苦しかった?

 六年間呪いを受けてきて。

 オレがあの時言葉を否定して。

 今だって、こんな深い傷で苦しいはずなのに。

 

 

 なのにアルヴィスは、オレの痛みを和らげようと、笑顔を浮かべてくる。

 

 

 

 なんでそんなに、優しいんだよ。

 

 

 

 

 

「くぅ……くそおぉ!!!」

 

 滲みだした涙を必死で押さえて、ギンタは呻いた。

 

「アルヴィス!!」

「ベル……」

 

 ギンタの傍でアルヴィスに張り付いていたベルが呼びかけると、アルヴィスは動かない身体で、ゆっくり顔を向けた。

 視線が合うと、アルヴィスが微笑んでくる。

 いつもベルが隣にいる時のように。

 

「今までずっと、傍にいてくれてありがとう……」

 

 何も言えず泣きながらアルヴィスを見つめるベルに、アルヴィスが手を伸ばす。

 ベルの目元から零れ落ちる涙を、アルヴィスは震える指先で優しく拭った。

 

 泣き虫の彼女が泣いた時、何度もしてくれた仕草。

 

 その変わらない優しさに、ベルが更に涙を流す。

 溢れ出す雫が、アルヴィスの顔でいくつも弾けた。

 止めどなく生まれる涙の軌跡を、アルヴィスはぼんやりと見ていた。

 

 

「アルヴィス……」

 

 

 誰からともなく呼んだ名前に反応し、アルヴィスは緩慢な動きで首を巡らし仲間たちを見つめる。

 

 

「すまない、皆……最後まで……一緒に戦えなくて……」

 

「——謝るな!!」

 

 

 途切れとぎれのアルヴィスの言葉を、遮るようにドロシーが声を上げる。

 

 

「アンタは何も悪くない……アンタは何も悪くないんだから…………!!」

 

 

 言葉を否定するように強く首を振り、最後は滲んだ声で言い募った。

 俯いた桜色の髪の隙間から、ぽたぽたと涙が落ちる。

 ほかの者は声を発さなかったが、気持ちは同じだった。

 

 段々と、ギンタの抱えるアルヴィスの呼吸が細くなってくる。

 先程よりも胸をやや大きく上下させる彼は、乾いた咳を何度かこぼしたが、ゆっくり息を吸いながらギンタを呼んだ。

 

 

「……ギンタ……」

「……なんだ?」

 

 

 擦れかかった声。しかし、強い光を煌めかせた眼差しで、アルヴィスはまっすぐギンタを見据えた。

 そう、初めて会った時のように。

 

 

 

 「……歩みを……止めるな………」

 

 

 

 どんなに辛い運命を背負っていても。

 決して揺るがすことのなかった、信念を宿した瞳が。

 

 自分を映し込んでいるのを、ギンタは静かに見つめた。

 

 

「自ら進むことを閉ざすのは…………死ぬことと同じだ……」

  

 

 砕け散った窓から見える蒼穹に、何かを描いているのだろうか。

 小さく表情を歪めたアルヴィスは、襲い来る激痛にぐっ、と息を詰めた。

 ヒュー、ヒューと、苦しげに繰り返される呼吸。

 それでも、痛みで細められた瞳を、アルヴィスはなおもギンタに向けて

 

 

「どんなに辛くても…………前を……見ろ…………」

 

 

 擦れた声で、静かに、言った。

 

 

 

 

 彼の生き方そのものの、その言葉。

 声を出したら、感情が溢れてしまいそう。

 

 

 だからギンタは、アルヴィスにしっかり見えるよう、

 

 

 

 強く、はっきりと、頷いた。

 

 

 それに一瞬微笑んだように見えたアルヴィスの顔は、殆ど色を失っていた。

 やがて、握っていたアルヴィスの手が小さく動く。

 震えながら込められていた力が、ぎゅっと強まる。

 

 それが、アルヴィスの最後の力なのだと、ギンタはどこかで理解していた。

 

 

 

「……頼む、ギンタ……」

 

 

 

「この世界の...」

 

 

 

 

「メルへヴンの…………へい、わを…………」

 

 

 

 

 

 永遠とも思える時間を経て

 

 

 アルヴィスの瞼が緩やかに閉じられた。

 

 

 

 ギンタの手を握りしめていた指から、静かに力が失われる。

 

 

「うそ……そんなの…………」

 

 

 大きく瞳を見開いたベルが涙を流しながら、アルヴィスの身体を揺すり始める。

 

 

「ねぇ……アル……アルってばぁ……っ!」

 

 

 揺り動かす動きに合わせて、アルヴィスの髪が揺れる。

 しかし、彼の蒼い瞳は閉じられたまま。

 

 

「アルヴィス……アルヴィス……!!」

 

 

 ベルの呼びかける声が、高い天井の空間に何度も強く反響する。

 その声に段々と悲痛な色が濃くなっていくのを、誰もが黙って聞いていた。

 

 

 

 

「アルヴィスーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 ベルがどんなに呼びかけても、アルヴィスが目覚めることは無かった。